2008年09月10日

"Gay Wizard" の訳し方?

時を遡ること3週間。

読みかけの本を家に忘れてしまっていたため、帰り道に地下の本屋さんへ立ち寄ってみることにしました。

すると、大々的に宣伝してる雑誌の表紙に、「グーグルで人間はバカになる!?」「ハリポタ作者 J.K.ローリングの"告白"」という、大変面白そうな記事のタイトルが並んでいるではないですか。

即決で買ってしまいました。



で、帰りの電車の中で早速ローリング女史の「告白」なるものを広げてみると、それはなんとローリングが今年6月にハーバード大学の卒業式で行った講演の内容を紹介した記事だったのです。

自分が周りの期待を裏切って好きな道に進むことになった経緯や、挫折を乗り越えた経験などに触れており、期待を裏切らない内容でした。
しかし、訳文を読んでいて一つ疑問が。最初の結婚相手と別れ、どん底を味わったのが卒業「7日目」とあったのです。

えっ、そんなに早かったの?と思い、グーグルで原文を探してみると、ハーバードの校内紙のウェブサイトにちゃんとありました。

http://www.news.harvard.edu/gazette/2008/06.05/99-rowlingspeech.html

そこで確認をしてみると、"a mere seven days after my graduation day" 「卒業の日からたった7年後」となっていました。
やっぱり間違いだったのですね。

しかし、原文を最初から読むと、また気になる点がいくつか出てきました。
第三パラグラフの最後の方で、
"This liberating discovery enables me to proceed without any fear that I might inadvertently influence you to abandon promising careers in business, law or politics for the giddy delights of becoming a gay wizard."

というジョークが入っていたのです。

これを読んだ瞬間、彼女がダンブルドアにカミングアウトさせたことを思い出し、思わず笑ってしまいました。

しかし、日本語訳を読んだときには、そんな気の利いたジョークに気付かなかったぞ、と思い、確認してみると案の定、"gay wizard"は「能天気な魔法使い」になっているではありませんか。

これを翻訳した人は全く分かっていないな、と呆れてしまいました。


さて、次の日には同じく翻訳パラリーガルをやっている同僚の匠(並外れたプロ意識を持っていて、頭が下がるほど研究熱心なので、もっと良い渾名が思いつくまで「匠」とします)にローリングのスピーチ(原文)へのリンクをメールで送り、あわせて誤訳も指摘しました。

すると、すぐに、
お〜、このスピーチは6月末に原文を読んで、すごく感動した記憶があるよ。

えっえっっと・・・
gay って、「陽気&同性愛」をかけたジョークっていう意味だよね?(汗)

との返事が。

うーん、言われてみると、この両方のニュアンスを含む、気の利いた訳語を考えるのは結構難しいかも、と思ってしまいました。

で、その後、彼女の部屋に様子を見に行くと、何やら一生懸命調べものをしていました。「今忙しいの?」と聞くと、「いや、"gay"のうまい訳語がないものか、と思って調べていたんだけど...『ゲイ』しかないのかなあ」

これにはびっくりしてしまいました。

でも言われてみれば、ローリングの意図したことを伝えるには「ゲイの魔法使い」という表現が一番良いかもしれませんね。
確か、「クィア・アイ」でも「お洒落・楽しい・同性愛」すべてをひっくるめて表現するために「ゲイ5人組」という紹介の仕方をしていました。
posted by EnglishMaster at 19:09| Comment(832) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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